サ高住形式の有料老人ホームにて、プッシャー症候群の女性がおられた。
体重が50キロ後半にて拘縮は無く、寝たきり。
普通ならそのレベルだと、トランスは1人で充分なんだけど
如何せんプッシャーの為、動かすと全身が固縮する感じになってしまう。
座位になると、自分では真っすぐに座れていない感覚なので
グイグイ強い力で押してきて斜めになってしまう。
その力の半端ない事。
そんな訳で、一人では支えきれなくなっての2人介助。
車椅子に座っても、やはりグイグイ。
そのままだと車椅子から落ちてしまう為、ナーセントパットを側面に入れて対処するも
それすらグニャ~となって、本人さんは傾いてしまう。
排便コントロールも上手くいっておらず、よく水便での漏れが何度もあった。
でも、これは本人さんのせいでは無い。
それなのに、それについて何か言うヘルパーがいるらしい。
「らしい」と言うのは、パット交換に訪室すると
「あなたで良かった。他の人やったらどうしよかと思った。」と、よく言われ
「こんな汚い事させて、すいません。」と言われる度
〇〇さんのせい違うんですから、気にしないで下さいね~ と言うと
「そう言うてくれはって、ほっとします。他の人やと…ね。」と言われる。
詳しくは仰らないけど
1日に何度も排便があり、漏れでの下肢衣類やシーツ汚染の度
本人さんにとっては、傷付く言葉を言う人もいる…と言われる。
具体的に仰らないので、どういった言葉なのかは解らないが
こういった事は、極力言動の配慮が必要だと私は思っている。
基本、自分が言われて嫌な事は言わないようにすればいいだけなのだが。
シュンとする姿を見た時、決まって私はこう言っている。
便であろうが尿であろうが、
私も皆もおんなじモン出してるんですから気にしないで下さいね
〇〇さんだけが特別なモン出してる訳と違うんですから。
それこそ、でっかい卵だの何か得体のしれんモン出してたら
私も何か言うかもしれませんけどね~
だから出すもん出して、溜めんのは もっとえぇもん溜めましょね~
…と言うと、皆笑って強張った顔が穏やかになる
ケアには、しょーもない事を言って
緊張をほぐす「笑い」も、時にはいるんじゃないかな?と思っている。
私の “現場” は、入居者さん達にとっては「生活の場」なんだから。
そうこうしている内、この方が急変にて逝去。
入居されて数か月だった。
ある日、日報を提出しに事務所に行った時
「イソラさん、ちょっと…」と、施設長に呼ばれた。
「先日亡くなった〇〇さんのご家族さんが、
イソラさんの事を名指しで言ってこられて。」
え…何か私、やらかしたっけ? とドキッとした。
「イソラさんには、いつも本当に良くしてもらって…と
いつも母が喜んでいましたので、有難う御座いましたと
お伝え下さいと娘さんが言いに来られました。
他にも何人か言っておられましたので
私からもお礼を言っておきますね。有難う御座いました。」
その言葉を聞き、正直嬉しかった。
嬉しかったのだけど…何だかなぁ…と言う気持ちも。
何故なら、私は〇〇さんに対して特別扱いしていた訳では無い。
他の入居者さんに対するのと、同じようにケアをしていただけ。
要するに、介護としての仕事をしていただけなのだが
私が名指しで褒められると言う事は、他の人はどういったケアを?と思ってしまった。