教え

 

その方は右片麻痺があり、発語にも障害がある女性の方だった。

でも自立心が高く、、殆んどの事をご自分でされる。

(仮にAさんとする)

 

初めてAさんにお会いしての入浴介助時

衣類を脱ぐ時、手伝おうとすると、「いい。」と言って手を振り払われた。

…で、見ていると

動く方の手と口を使って、上手く脱がれる。

着る時もそうだった。

靴下でさえ、初めに足先に引っ掛けて上手く穿かれる。

短下肢装具も、ご自分で。

 

そんなもんだから着脱については、お風呂上りに背中側の衣類を下に下げるだけ。

入浴中も私がお手伝いするのは、動く方の腕と背中を洗うのと

浴槽に浸かる時、バランスを崩さない様支えるのみ。

(こんな状態でも、機械浴ではなく一般浴を使用されていた。)

 

初めの頃は、その突っけんドンな物言いや

いきなり振り払ってくる手に戸惑いもしたが

慣れてくると何の事はない、ただ発語が不自由な為

解りやすい発音の言葉と、短い単語でないと相手に伝わりにくい事を

Aさん自身が、よく解っておられる故だった。

 

手を振り払うのも、手助け無用の意思表示。

うん。 確かに解りやすい。

初めて接する時に 「いい。」 と言われるだけだと

「え?何が?」 もしくは 「どういった事が?」 となると思う。 

そうなると、説明するのに言葉数を増やさないといけない。

でも発語もしにくく発音が不明瞭な為、相手になかなか伝わらないからだ。

 

介護サービス側も、完全な訪問介護ではなく

ケア付きアパートでの訪問介護の為、サービスには決まったスタッスがいつも入る訳ではない。

おまけに定着率が悪い為、勤務しているスタッフ自体がよく入れ替わる。

 

それと、此処に限らず

同じヘルパーとして、この人ってどうよ? てな人もいるのが現実。

利用者さん対し、上から目線での言動。

見ているこっちも 「あんたいったい何様よ!?」 と、なるヘルパーもいる。

 

例えば、オムツの方の排便に対し

「 ウンコなんかして、ほんっと汚いなぁ。変えるこっちの身にもなって欲しいわ。」

と本人に言ったり、

入浴時にお湯の温度確認もせず、いきなりシャワーを上半身に掛けて

「ひゃ! 冷たい。」と、利用者さんを叫ばす事をしたり。

 

…で、あまりにも酷い時は つい注意をしてしまう。

そうすると、そういうヘルパーに限って

「いちいち五月蠅い。」 とか 「新人のくせに生意気だ。」 となる訳でして。

逆に、私の方がトラブルメーカーになってしまう事がよくある。

自分では、柔らかく言っているつもりでも

相手にしたら、カチン!とした物言いをしてしまうんだろうな(汗 > 私

ま…利用者さんも然りで、「何様よ?」となる方もいる事実(笑

 

それはさておき、Aさんにしてもそういうヘルパーに当たった事があって

言ってる事が伝わらず、ヘルパーから嫌な事を言われたりしたのかも?

と、考えたら納得できる。

Aさんにとっては、初めてのスタッフが来た場合どんな人かが解らない。

もしかすると、何様ヘルパーだと何を言われるか解らない。

 

仕方ないよな…。

 

でも、何度も顔を会わせる内に

私が何様ヘルパーではないと解ってからは

Aさんは、笑顔でよく話しをされる方だった。

…とは言え、やっぱ言葉は聞き取り難い(><;

 

その都度、「ごめんなさーい。もう一回言っていただけますか?

私まだ精進が足らんから、一発で聞きとれんのですよ。

私の勉強の為と思って、解るまで何度も言って頂けませんかぁ?」

と、自分の顔の前で手をスリスリしながら、拝む様に言うと

笑いながら「わぁった。わぁった。(解った解った)。」と言って何度でも言って下さる。

 

そんなAさんの足が褥そうになった。

短下肢装具が当たる、くるぶし部分。しかも黄色期。

入浴時、洗い場にて右側に浴槽があり周る事が出来ず右側は見えず

足もAさん自身が洗われ、洗い残しが無いかは見ていたが

私も含めスタッフ全員、装具での褥そうまで注意点が及ばなかった。

くるぶし部分、大きくぽっかり穴が開き中の筋肉だか何だかが丸見え状態。

 

 

「Aさん。すみません。 こんなになるまで気付かなくて。 ほんっと申し訳ないです。」

と言うと

「なあ言うてぇんあ。(何言ってるんや) 

あぁたぁあ、わぁういんちゃああん。(あんたが悪いんちゃうやん)。」

と笑いながら、私の肩をポンと叩いて慰めてくれた。

 

 

そんなこんなで、優しいAさんにも色々教えてもらい勉強させて頂いた。

 

そして私が辞める事を知った時

“此処ではあんたが、一番好きやったのに何で辞めるん。”

と 私の腕を軽く叩きながら泣かれた。 

 

正直に訳を話すと

“うん。解った。元気でやりや。” と言ながら

涙を拭って、笑顔で挙手された。

 

 

ごめんねAさん。 そして ありがとう。

 

 

利用者さんから、いっぱい優しさをもらってる私は幸せ者だな…と思う。

 

 

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