視えていた頃 『強い人』

 

 

 

まだ私が若かりし１０代の頃、結構〝強い〟感じのあっちの人に遭遇した事がある。

 

夜、何とな～く寝付けず時計の音だけが耳についていた。

 

 

 

カシャ………カシャ………カシャ………カシャ………

 

カシャ………カシャ……カシャ…カシャ

 

あれ？　時計の音が速くなった？

 

カシャ…カシャ…カシャカシャカシャカシャカシャ

 

え？え？　何？　何で？

 

ビシッ！　　　金縛りキターーー！

 

 

 

そのとたん、部屋中重苦しい空気になり、産毛が逆立ち耳がピクピク。

 

水中にでもいる様な、胸を圧迫される空気の重さ。

 

 

 

ミシッ　ミシッ　ミシッ…

 

私の足元の方から、畳を踏みしめる音が近付いて来る。

 

ドサッ！

 

〝何か〟が、私の右横に乗って来た。

 

重みは感じるけれど、姿は視えない。

 

 

 

その重みがズリズリと、私の胸のところまで上がって来たとたん　視えた！

 

面長な顔で、スポーツ刈りを長くした様な髪型。

 

一重の目で、高い鼻に薄い唇。

 

藤色のタートルネックのセーターを着た男性。

 

 

 

そいつがジンワリと私の首を絞めてきた。

 

首を絞められている事よりも、何の感情も読み取る事の出来ない瞳が怖かった。

 

首だけではなく、胸にも圧迫感。

 

息が苦しいのでは無く、血が止まって頭が破裂しそうな苦しさに

 

気が遠くなるのでは無く、頭の中が白くなっていく様な感じになった時　イキナリその男が消えた。

 

 

 

頭から、血がサーッと下に下がる様な感覚。

 

でもまだ、金縛りは解けない。

 

今度は、少し離れた左側に誰かがいる気配。

 

 

 

目だけを動かし、視てみると女性が２人座っている。

 

何故かその時、「あぁ…この人らが来たから、さっきの男が消えたんだな。」 と、ふと思った。

 

 

 

向って左、私に近い方の人は古典柄の留袖を着た中年の女性。

 

顔は、何故か穴が開いた様に真っ黒。

 

その右、一歩後ろに座っている女性は洋服を着た若い感じの女性。

 

今でいえば 『貞子』 みたく、少しボサボサの長い髪で俯き顔は見えない。

 

 

 

留袖の女性が、何か字を書いた半紙を両手に持って私に見せる。

 

達筆すぎて、私にゃ読めねぇよっ！

 

半紙を下に置き、北西の方角を指差す。

 

意味解かんねえぇぇぇぇー(´Д｀；)

 

 

 

ピシッ！　バシッ！　ビシッ！

 

大きなラップ音と共に消えた。

 

そのとたん、近所の犬達が一斉に吠え出した。

 

 

 

金縛りが解けると同時に飛び起きて電気を点ける。　カチッ

 

襖を隔てた隣りの姉の部屋でも、ほぼ同時に　カチッ

 

 

 

姉が襖を開けて言って来た。

 

今のん、すごいラップ音やったなぁ。　アンタも聞いた？

 

聞いたも何も、こっちに来とったっ！つーねん！

 

はははははｗ　アンタの方に来とったんかｗ　どうりで何か変な感じがした訳やｗ

 

笑いごっちゃない！　それやったら何で声掛けてくれへんのや！？　声掛けてくれたら消えとんのに！！(#ﾟДﾟ)

 

無理やってｗ　こっちも金縛りにおーとったっ！ちゅ～ねんｗ

 

あーそれで、同時に電気を点けた訳か…（－－；

 

でも、何か…強い人らやったんか？　

 

うん。　何かそんな感じ。

 

ここらの犬も、ムチャ吠えよったなぁ。　視えたんやろか？

 

さぁ？　でも、視えんでも何か感じたから一斉に吠えたんちゃうか？

 

そうやな。　ま…済んだ事やし寝よ寝よ。

 

 

 

結局は、何だったのかはサッパリ解らない。

 

ただ、視えないハズの姉にも〝何か〟を感じる事が出来たんだから

 

やっぱ〝強い人〟だったんだろうな…。