知らないフリ

 

 

〝此処〟には、父と同じ病気の方が数人いらっしゃる。

 

個々によって進行はマチマチなのは、当たり前なんだけど

 

父が死に逝くまでの進行の仕方を見て来た私は

 

その方々に対し、ついつい思い入れが強くなってしまう。

 

 

 

 

その中の、一人の方の右半身の振戦が始まった。

 

ゆっくりだが、確実に進行しているのが解ってしまう。

 

この方は他の病気にて、一時期レベルダウンしたが

 

本人さんの頑張りもあって何とか介助にて歩行出来る様になったところだ。

 

 

 

 

そして今、ゆっくりと　ゆっくりと　再びレベルダウンしてきている。

 

この病気は遅かれ早かれ、いずれは寝たきりになる病気。

 

 

 

 

また前の様に、自分で何でも出来る様になりたいんです！

 

叫ぶように、私に訴えてこられた。

 

あんなにも頑張って、ここまで回復してきたのに…このタイミングで進行するなよ…。

 

 

 

現状維持がやっとの回復。

 

元通りを望まれる、この方。

 

その姿に、父をだぶらせてしまう私。

 

 

 

父も初期の頃は、元通りになる事を強く望んでいた。

 

いくら頑張っても頑張っても、元通りになるどころか病気の進行に伴い

 

段々と動けなくなる身体に苛立ち、

 

「いくら頑張ったところで、元通りにはならんねんから頑張る意味が無い。」と言って　やがて諦めるようなった。

 

 

 

諦めるようになってからの父は、病気の進行も早くなった。

 

せん妄の回数も増え、それこそアッと言う間に寝たきりになってしまった。

 

度々襲う　大きな振戦。　食べたい物も食べられなくなり

 

やがて、何も嚥下出来なくなった。

 

 

 

 

この人には、父と同じ様にはなって欲しくないな…と思いつつ

 

『頑張れ』 とは、私には言えない。

 

頑張ってらっしゃるからこそ、歩ける様になったんじゃないですか～♪

 

笑いたくもないのに、笑顔で言う。

 

 

 

〝元通り〟を望んでおられる方に対し、「頑張れば、きっと元通りになれますよ。」

 

…とは言えない私。

 

そのクセ、

 

私は医療の人じゃないから、元通りになれるかどうかは解りませんが

 

前は自分でズボンすら上げる事が出来なかったのに、今はゆっくりとはいえ　出来る様になったっしょ？

 

何事も焦ってはダメですよ～♪

 

 

 

 

どうなっていくかを知ってるクセに、知らないフリをする。

 

これも　やっぱ嘘付きだよな…。

 

もう、今月いっぱいとはいえ　今日も今日とで嘘を付く。