抑えられない感情

 

ファイル項目『エンゼル』の、とある方の名前を見て思い出す。

 

麻痺する部位も増えてきて

 

痩せ衰えて　下血して

 

苦しみ抜いて　旅立った。

 

 

 

今はもう、何も無いガランとした居室。

 

外された名札の跡が白く残っているだけ。

 

もうここにはイナイのだと、実感する。

 

 

 

その白い札の跡を　暫く見つめていた。

 

込み上げて来るモノをグッとこらえ、次なる居室へ笑顔で入る。

 

 

 

悲しんではいられない。　次があるから

 

泣き顔なんぞは見せられない。　次があるから

 

 

 

 

 

 

それなのに・・・シクッてしまった・・・

 

 

 

 

 

バイタル（血圧・体温・脈拍等）的には良好なのに

 

食事の摂取量が、ガクッと落ちてきたDさんが

 

今から絶食。　ご飯　いらない。　と　不自由な言葉で　たどたどしく言って来た。

 

 

 

 

 

え？　何も聞いてませんが、検査でもあるんですか？

 

無い

 

じゃ、院長か誰かが言ったんですか？

 

違う。　誰も言って無い。　自分で言った。

 

どうして？

 

もう　ご飯いらない。　こんなんで　生きたく無い。　だから絶食。

 

 この瞬間、私は感情を抑える事が出来なかった。

 

 

 

 

なんで、んな事言うんですか！

 

生きたくても生きれない人もいるのに！

 

あぁん？　Dさんは今生きてんのに絶食ぅ！？

 

なんやねん！　それ！　んなもん贅沢やわ！

 

「生きたい」と言いながら　死んでいくもんを目の前で見たことあるんですか！？

 

ない・・・。

 

もう、涙ボロボロ状態で怒鳴りまくってしまっていた。

 

 

 

 

Dさん・・・お願いやから、そんな悲しい事言わんとって下さいよ・・・

 

Dさんが頑張ってっから、私らもお手伝いしてんやから・・・

 

せやのに、そんなん言われたら・・・

 

お願いやから、んな事言わんとご飯食べて下さいよ・・・。

 

絶食なんか、言わんとって下さいよ・・・。

 

泣きながら、Dさんに掴みかかっていた。

 

 

 

解かった。　もう言わん。　ご飯食べる。

 

目に涙を浮かべながら そう言ってくれたDさんの答えに

 

ホッとした瞬間、我に返る私。

 

 

 

 

やべえぇぇぇー　ワシ　感情出しまくりやんけ！　／(￣皿￣;)＼

 

 

 

 

Dさんの居室を後にして、落ち込んでしまった。

 

そう・・・これはただの八つ当たりだ・・・。

 

これはただの、自分への言い聞かせだ・・・。

 

Dさん・・・当たってしまって　ごめん。

 

感情をぶつけてしまって　ごめん。

 

 

 

 

後悔しながら腫れた目を、ﾊﾞｼｬﾊﾞｼｬ水で洗って冷やす。

 

もう大丈夫だろうと、待機所へ帰ると・・・

 

ﾅﾝやその顔。　何泣いとったんや。

 

 

 

 

・・・チッ　　バレたか・・・

 

こうして　何度となく「感情でモノを言うな！　プロに徹しろ！」と怒られている　(´Д｀）