ものの言い方

 

言葉は時に刃になる。

その言葉にて、心に深く傷が付く事がある。

 

 

数年前、姉が脂腺癌で他界した。

脂腺癌と解るまで、いくつかの病院を紹介されて転々としてやっと…といった具合だった。

診断が出た時には、既に癌が進行しており眼球摘出手術になった。

眼球を摘出して、次は形成手術云々の段階になった時

リンパ節への転移が解った為、形成手術どころではなくなった。

 

冷たいようだが私は、リンパ節への転移を聞いた時

正直、嗚呼…もう、回復は見込めないかも…と覚悟を決めた。

 

 

医師からの余命宣告。

 

その時勤めていた職場の上司に、姉が余命宣告を受けている事を伝え

今はまだ大丈夫ですが、容態が悪くなってきて急な呼び出しがあるかもしれません。

今後、容態が悪くなってきた時は また言いますので

その時、暫く夜勤を外してもらう等

そういった体制をとっていただける事は可能でしょうか? と相談をした。

 

この職場では無いが、父の病気の時も

死期が近くなった時に、私が急に抜ける事があっても大丈夫なようにしてもらった事があったので

ここの職場でも、してもらえるかどうかの相談であった。

特に夜勤の場合の急な抜けは、仕事が回らなくなる可能性があるので

職場には、早めに伝えておいた方が良いとの判断で。

その時、上司の答えは 『副施設長に、伝えておきます。』

 

2日後、その上司に勤務中

『この前の件なんやけど』…と呼び出された。

 

上 『この前の事、○○さん(副施設長)に伝えたところ

お姉さんがもうダメなんやったら その期間は夜勤を外れてもらいます…との事でした』

 

私としては、今はまだ姉は大丈夫なのに

この『お姉さんがもうダメなんやったら』 との言い方が胸にグサッ!ときた。

(姉が今直ぐどうこうという段階では無い事も、上司には伝えてあった)

 

でも、そういった体制をとってもらえる事に気を取り直して

私 「はい。ありがとうございます。その時はお願いいたします。』

上 『…で、どうなんです? もうダメなんですか?

もうダメなんやったら、今週から夜勤は外しておきますんで。』

 

絶句してしまった。

 

私は姉が余命宣告を受け、覚悟を決めたつもりでも

まだ、そういう段階ではない姉に対し もしかしたら助かるかも…てな

希望のようなものを、ほんのちょっぴりでももっていた。

それを真っ向否定と言うか、壊されたと言うか…

 

 

私 「… 」

上 『やっぱり夜勤の時、急に抜けられたりしたら困りますからねぇ』

私 「… それは解っています。 ですが、今はまだ大丈夫ですので……

容態が悪くなった時は、また言いますので……

その時は、お願いします。」

上 『じゃぁ、もうアカン時は言って下さいね。 夜勤を外しておきますから。』

 

 

職場では我慢していたが 帰宅後 泣いた。

 

 

父の時、勤めていた職場の上司は無駄な言葉は一切言わず

『では、その時また言って下さいね。抜けても大丈夫なようにしますから』

 

姉の時の職場の上司は

『…で、どうなんです? もうダメなんですか?』

『じゃぁ、もうアカン時は言って下さいね。 夜勤を外しておきますから。』

 

 

結果論的には、両者は同じ事を言っている。

でも、言い方ひとつで受ける側として

こんなにも違う…という、具体例。

 

 

 

心が狭いと言われようと

私は 『もうダメなんですか?』

と言った上司の言葉は、一生忘れないし許さない。

 

 

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