視えていた頃 『疑似体験』

 
 
小さな感情や意識の流れ込みは時々あったが
 
阪神淡路大震災の日を機に、大きな流れ込みでの疑似体験は無くなった。
 
 
 
普段なら5時半頃には、配達は終わっていたのだが
 
あの震災の日は少し寝過ごし、配達を残すところ約10件程の時に揺れがあった。
 
 
 
初めは 「あれ? 眩暈か?」 と思ったけれど、立っている事が出来なくなって座り込み
 
信号機が嫌という程揺れているのを見て、やっと地震だと気が付いた。(←鈍い奴)
 
空に稲妻の様な閃光が走った。
 
 
 
揺れが収まり「すごい揺れでしたね。」と、配達先のお客さんと暫く話しをした後、残っている配達を再開。
 
後7件という時に〝それ〟は来た。
 
 
 
突然目の前が真っ暗になったかと思ったら、家がへしゃがり一面瓦礫の様な景色。
 
嗚呼…まただ…。 また誰かが私に〝その瞬間〟を視せる気だ。
 
 
 
 
〝今の私〟は男性の様だ。 
 
だがハッキリとは確信が持てず、男性の様な気がする…といった程度だった。
 
鳩尾辺りの背中側から下半身にかけて、痺れる様な痛みと重さ。
 
足先には感覚が無い。
 
 
 
〝私〟の目が霞み、物がよく見えない。
 
誰かが来た。 3人だ。 
 
一人は女性だった。 後の2人は目が霞んでよく見えない。
 
 
 
何故か今回は、無音での疑似体験だった。
 
〝私〟が 「助けて。」 と、その3人に言っている。(「助けて」と言う強い感情が イソラ自身に流れ込んで来たので)
 
火が! という、複数の意識の流れ込み。
 
〝私〟の 「生きたまま 火に焼かれたくない!」 という強い感情。
 
 
 
 
どうやらこの痛みと痺れは、崩れた物の下敷きになっているんだ…とイソラの意識が判断する。
 
目の前にいる3人が一生懸命 〝私〟をここから出そうとしてくれている。
 
でも〝私〟の上の物はびくともせずに出られない。
 
やがて 「ここから出られないのなら せめて火が来る前に殺して欲しい。」と〝私〟が訴えている。
 
 
 
3人が〝私〟に何か言っている。 でも、イソラ自身には聞こえない。
 
3人が〝私〟の側から離れて行く。
 
離れる前に〝私〟の前に中身の入ったペットボトルを置いて行った。
 
 
 
離れて行く際、女性が何度も振り返り その度に何度も何度も頭を下げるのが何とか見えた。
 
〝私〟の 「見捨てないで。」 「お願いだから殺して。」「行かないで。」 という悲痛な叫びがイソラの中に流れ込む。
 
焼けつく空気で息が出来ない。 苦しい。 痛い。 
 
「何で殺してくれないんだ!。」という 恨みにも似た感情。
 
「助けて 助けて。 嫌だ!」と言う悲しみの感情。
 
 
 
 
それらの感情に押し潰されそうになって、私(イソラ)は弾かれた。
 
そして現実に戻った際、その時の〝私〟の苦しみ・痛み・嘆き・さまざまな強い感情が私(イソラ)の中に残っていて
 
暫くは涙が止まらなかった。
 
 
 
帰宅してニュースを見ても、火が出たなんて事はやっていなかったので
 
私が視たアレは、地震とは関係ないのか…と思っていたが
 
後日、新聞にて火災の事が載っていた。
 
それを見て、この時に亡くなったの人の誰かだ…と何故か思った。
 
 
 
でも、そうすると矛盾点がある。
 
私が疑似体験をした時には、まだ火災は起きていなかった。
 
それなのに後日の新聞にて、この時の人だと強く思った。
 
この食い違いが私には解せない。
 
単に、〝この時の人だ〟と感じた感覚が違っていただけなのだろうか?
 
確かめる術は何も無い。
 
ただ、この日を境に疑似体験は無くなっただけ。
 
 

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イソラ
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視えていた頃 『疑似体験』 への2件のフィードバック

  1. 空×ジ・O より:

    こんにちは。
     
    只でさえ、濃密な人生経験値豊富なイソラ様がそんな体験まで!
    しかし、立ち去る女性と取り残されるイソラヲトコ様の遣り取り、映画や小説よりも生々しくて胸に迫ってきます。
    中身の入ったペットボトルを置いて行く、なんて情景、体験しないと思い浮かばないもの。
     
    阪神淡路大震災・・・その日に限って、大幅に朝寝坊した・・・。
    家の田舎でも結構揺れたらしく、親類縁者、友人、御近所さん・・・全ての人が地震の時には目が覚めた・・・と云うのに、自分はしっかり寝坊して、慌てて犬の散歩を済ませ、食事を摂ろうとTVを付けて吃驚。
    でも、8時半くらいの時点で火、出てましたよ。彼方此方で。
     
    因みに、あの時のTVでの某老キャスターの「まるで温泉地みたい」発言と、キャスター気取りの何時も原稿読み違えたり噛んだりばかりしている朝の顔となった某アナウンサーのはしゃいでいるとしか思えない中継ぶりを見てアノ二人が未だに大嫌い継続中。

  2. イソラ より:

    こんにちは
    当日に もう出ていたんですね。<8時半くらいの時点で火、出てましたよ。
     
    あの時 私が帰宅したのは6時半過ぎ。
    家の中でも少々被害がありまして それを片付けてからTVを点けたのですが
    たまたま点けたところで地震の事をやっていたから そのまま見ていたので
    何チャンネルかは知りませんが その時やってた被害状況は ヘリから撮ったものを映し出していました。
     
    「何も異変は無く これといった被害は見受けられません」との状況説明をしていたので
    あれだけ揺れたのに 何の被害も無いとは変だな と思っていました。
     
    午後から本格的な被害状況をTVでしていましたが その時も火災の事は言っていませんでした。
    たまたま見たチャンネルが そうだっただけなのかもしれませんが(^^;
    (私自身 午後までは 色々あってTV等を見ていなかっただけですが)
    ただね…こんなにも被害が大きかったのに 朝の番組でのヘリはいったい何処を映していたんだ!?
    …と 家族皆で怒っておりました。(全然違うやんけっ! て)
     
    実は この疑似体験には 後日談もあるんですよ…。
    数日後の新聞で 火災が出てからの遺族さんからの投稿があって
    私が視たまま ソックリな状況での話が載っていて愕然としました。
    果たして私が体験させられた人と 同一人物かどうかは解りませんが 
    ホント…ソックリで…その記事を読み 再び〝あの時の人〟の感情がよみがえり 涙が止まりませんでした。
     
    こういうのはホント…嫌です。 
    私自身が実際に 体験した事でもないのに 人の体験をさせらる事(疑似体験)で
    沢山の悲しみに 押し潰されそうになります。

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