視えていた頃 『怖い奴』

 
 
昔、飼っていた犬がよく2階へ上がって来ていた。
 
カシャッ (前脚の爪が当たる音) タン (後ろ脚の音) カシャッ タン カシャッ タン ドサッ (階段を上がりきり、戸の前に座る音)
 
暫くすると、開けてくれー と、カリカリ 戸を引ッ掻く。
 
 
 
 
その日も、階段を上がって来る音が聞こえて来た。
 
カシャッ タン カシャッ タン カシャッ タン…… ドサッ
 
……??  いつまで経っても戸を引っ掻く音が聞こえてこない。
 
「ボビー?」 (当時飼っていた犬の名前)
 
引き戸をガラッ!と開けると、そこにボビーの姿は無くゾッ!とした。
 
 
 
犬がいなかったからゾッ!としてたのでは無く
 
何故か〝戸を開けてしまった〟事にゾッ!とした。
 
その日から、犬とは違う〝何か〟が階段を上って来る様になった。
 
 
 
 
 
カシャッ タン カシャッ タン …… ドサッ
 
気配を探る。
 
違う。 犬の気配じゃない。
 
 
 
ゴト… 2cm程、戸が開いた。
 
咄嗟に視てはダメだ!と思い、戸に背を向けた。
 
何故、そう思ったのかは解らない。
 
兎に角、絶対に視てはいけない…との思いでいっぱいになった。
 
〝何か〟が覗いている気配。
 
 
 
ゴトッ スススー 戸が開く音。
 
ミシッ ミシッ ミシッ 畳を踏みしめ〝何か〟が近付いて来る。
 
私の真後ろで止まった。
 
いる! 〝何か〟が私の真後ろにいる!
 
冷や汗がダラダラ出た。
 
 
 
カシャッ タン カシャッ タン…  今度は犬の気配。
 
「ボビー!アカン! 今上がって来たらアカン!」
 
後ろを振り向く事も出来ず、心の中で叫んだ。
 
 
 
カシャッ タン カシャッ タン カシャッ ダダダダダー ドン!
 
落ちた! 
 
ボビー!
 
〝後ろの奴〟の事を忘れ、夢中で階段の方へダッシュした。
 
一瞬、目の隅に首の無い白っぽい着物を着た上半身が視えた。
 
 
 
階段の下で、犬が失神して痙攣を起こしている。
 
階段を駆け下り、犬の名を呼びながら体を揺さぶる。
 
ボビーは、失神した為か白目を剥いてを脱糞していた。
 
 
 
怒りが込み上げ、今降りて来た階段の上を睨み付ける。
 
何の気配も姿も無かった。
 
 
 
犬も意識を取り戻し、一瞬何があったのか解らん…といった感じの表情をした後
 
尻尾を振って飛びついて来た。
 
あ…ヤバ…暴れるな… ボビーよ…糞を踏み散らかしてるがな…(--;
 
 
 
 
 
数か月間、〝そいつ〟は階段を上がって来ていたが
 
その度、怒りよりも怖さの方が勝っていた為
 
私は常に、視ない様背を向けては冷や汗をかいていた。
 
 
 
ある日、私の真後ろで 「クスッ」 と笑う声が聞こえたとたん
 
息が吹き掛かる程の耳元で、しゃがれ声で 「バイバイ。」 と言った後、〝そいつ〟はいなくなった。
 
ボビーは階段から落ちて以来〝そいつ〟が来ていた期間は、 階段を上がっては来なかったが
 
いなくなったとたん、再び階段を上がって来るようになった。
 
 
 
結局、未だに何だったのかは解らない。
 
でも、とにかく怖い奴だった。
 

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イソラ
カテゴリー: ホラー(?) パーマリンク

視えていた頃 『怖い奴』 への10件のフィードバック

  1. 空×ジ・O より:

    こんにちは。
    今、何年も続いているホラー・アンソロジーを読んでいました。
    「読み物としては面白いかもしれないけれど、全然怖くないんだよなぁ」
    などと思って本を伏せ、何気にPCを立ち上げて数カ所立ち寄ったら、イソラ様が更新してる♪
    ウキウキ気分で読み進めたら・・・
    途中で背筋がゾォォォォ~~ッとして、此方まで誰かが後にいるような気分になってきました。
    読み終わっても、ディスプレイを凝視する以外、怖くて他に視線を向ける勇気がありません(汗)。
     
    でも、イソラ様の事だから、絶対に犬の敵討ちを決行すると思ったのですが・・・
    強者は強者を知る。
    強い人程、相手の力量を一瞬で見抜くと云いますから・・・余程、強力だったのでしょう。その正体不明の首なしさん。
    それが分かるイソラ様も強力でしょうが。
     
    変に気取った怖くもないホラー短編集読むより、イソラ様の方が面白い(ぢつは先程伏せた本は後に置いてある・・・)からと、視えていた頃シリーズを纏めて読もうと思ったら・・・
     
    うわぁぁぁ!!!
    イソラ様・・・書いた記事をカテゴリ毎に分けてなかったぁぁぁぁ!!!!
     

  2. イソラ より:

    こんにちは 空Xジ・O さん
     
    強くはナイです 何時もビビりの小心者ですから(^^; (そんな私は か弱き子羊~♪)<強者は強者を知る
    真に強いのは わらわらゾロゾロの大衆の中 平気でいられる空Xジ・O さんの方だと思うのですが…(ポソッ)
     
    やり方が イマイチよー解らんのですよねぇ…いっちょ頑張ってみるかぁ…(--; <カテゴリ毎に分けてなかったぁぁぁぁ!!!!
     

  3. 空×ジ・O より:

    こんにちは。
     
    いぁ・・・今からだと大変案作業になりそうなので、一々カテゴリ毎に分けなくて良いです(爆)。
    この記事の御陰で、金曜日の夜に階段でコケタのでネタとして取り上げます。
    勝手にまたリンクしちゃいますw

  4. 空×ジ・O より:

    こんにちは。
    何度も申し訳ありません。
    カテゴリ分けしてくれたのですねw
    大変だったでしょう♪
    多謝です。
    でも・・・この時間から纏めて読むのは・・・ちょっと怖い(爆)。

  5. 編集者 より:

    怖いよ~(鬼泣)。
    あんまり怖くて、自分だけ怖い思いをするのも腹が立ったので、
    会社のみんなにURLを一斉配信しておきました。
     
    ……隣の美女に怒られました(涙)
    二重に怖い思いをしてしまった。ぐすん。

  6. Baron より:

    おはようございます。空×ジ・Oさんのところから飛んできて・・・コワイ思いをしました。だって、すごく悪意を感じる霊じゃないですか!こんなのはいやです。エエ・・・私だったら、部屋に塩を盛って神社でお祓いしてもらって、お札を階段に貼って悪霊退散!って犬を部屋に入れておくかな・・・・。ガクガク震えながら~

  7. 編集者 より:

    ごめんなさい!!!
    コメントを入れようとしたらエラーしかでなくて、
    何度も投稿したら以下のようなことになってしまいました。
    申し訳ありませんが、削除してください(涙)
    なんだか嫌がらせみたいな投稿になってしまった……。
    本当にすいません。

  8. イソラ より:

    こんばんは 空Xジ・O さん
    これを機に カテゴリ分けが出来る様になって 一つ賢くなれました~♪ 感謝です♪
     
     
     
     
     
    こんばんは 新人編集者さん。
    削除しておきました(^^)b
    コメント見た時 連投なのがホラーでした(笑
     
    はうぅぅ…(汗 <みんなにURLを一斉配信
     
     
     
     
     
    こんばんは Baroncia さん
    全く効果 無かったです_| ̄|○ <部屋に塩を盛って神社でお祓いしてもらって、お札を階段に貼って
    〝ソレ〟専門の所じゃないと ダメなのかなぁ…(--;
     

  9. NAOK より:

    こんにちは。次元ことNAOKです。
    ただいまイソラさんの投稿を絶賛拝読中! 時にウルっと時にクスッやワハハと…ええブログですなあ、ほんまに。
    しかし、この記事にはかなりゾワゾワとしましたー!
    ホラーカテゴリーの投稿を今現在で2/3を読みましたが、世間一般にある特に恐怖を感じない(僕はその辺は強い!-笑ー)話とは違い、本当に体験した者しか語れない内容ばかりですな。
    僕は物理学の観点から、見えると言うこと、動くと言うこと、感じるということなどを説明して、そういう事は科学的にあり得ないと建前では言っているのですが、イソラさんが体験している科学を超越する事象はなんなんだろう。ここらはまたチャットで話さんとあかん(笑)

    では、また。

    • sanzunokawa より:

      過疎地への訪問ありがとうございます(笑)
      ホラーカテでの体験談は、結局何だったのか?が解らない事ばかりですわ。
      私の方も、ぼちぼちですがNAOKさんのブログを読ませていただいておりま~す。

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