視えていた頃 『餓死』

 
 
 
誰かの意識が入って来た時、その人の身に起こった事を視せられる時があった。
 
〝視る〟と言うより、疑似体験みたいな感じかな?
 
 
 
何とも言えない奇妙な体験なのですが、どちらかと言うと
 
〝その人〟自身に私が憑依している様な感じ…と言った方が近いみたい。
 
そしてそれは、何の前触れもなく突然やってくる。
 
 
 
私はそれがとても嫌だった。
 
いつも〝体験〟させられるのが最後の瞬間だからだ。
 
中には私自身、知らなかった過去の出来事を知る事もあった。
 
 
 
 
 
 
ある日突然、意識が遠のく感じになのに意識はハッキリしている…という妙な感覚に陥った。
 
しまった! ヤラれた! 
 
そう思った瞬間、私は既に〝誰か〟になっていた。
 
 
 
 
今の〝私〟は、とりあえず大人だという事は解ったが、性別までは何故か解らない。
 
暗い場所。
 
〝私〟は横たわっている様だ。
 
目線の先に明るい場所がある。
 
どうやら此処は、穴の様だ イソラとしての意識が確認する。
 
 
 
誰かが覗いている。 
 
でも、逆光で暗い人影にしかみえない。
 
殆んど息が出来ない。 〝私〟はどうやら死にかけている。
 
指のひとつも動かぬぐらいに弱っている。
 
 
 
ゴツゴツしていて背中が痛いが、自分の下がどうなっているのかが全く解らない。
 
瞬きするのさえ辛いぐらいに弱っている。
 
 
 
人影が何かを放り込んで来た。
 
すごい衝撃。
 
次から次へと何かを放り込んで来る。
 
やめてくれ! 私はまだ死んじゃいない! 〝私〟の心の叫びがイソラの中に入って来る。
 
やめてくれ…助けて…助けて…嫌だ! 〝私〟の悲痛な叫びが心の中でこだまする。
 
 
 
 
次々と放り込まれたモノで、もう光すら見えなくなった。
 
私はまだ生きている…苦しい…助けて…助けて… 〝私〟が繰り返し心で叫び続けている。
 
〝私〟の生きたい!という深い悲しみと恨みが、イソラの中に流れ込む。
 
やがて、その思いも段々と力無く消えて行った。
 
 
 
そして〝私〟は息絶えた。
 
 
 
 
 
 
いつもなら〝私〟が死んだ瞬間、現実(?)に戻るのですが
 
この時は何故か、イソラの意識のみが〝私〟の中に留まった。
 
もう私(イソラ)は〝その人〟では無いので、痛みも息苦しさも何も無い。
 
 
 
真っ暗の中、色んな匂いがしてきた。
 
赤オニの匂い。 すえた匂い。 少し脂っぽい様な匂い。
 
嗚呼…この人は、生きながら埋められたのかな?
 
 
 
現実(?)に戻る瞬間、きつい訛りのあるしゃがれた声が聞こえて来た。
 
『すぃぐぉぐぅあな』
 
 
 
 
 
しごくあな??
 
何だろう?
 
何だかその言葉がすごく気になり、人に聞いたりして解った事。
 
 
 
 
私が 『しごくあな』 と聞こえた言葉は、どうやら 『いごく穴』 だった様だ。
 
何でも昔、飢饉の時に沢山の人が亡くなり
 
その人達をまとめて埋めたりした穴を 『いごく穴』 と言うそうだ。
 
 
 
 
はい…私、それまでは 天明(だったかな?)とかの飢饉の事は(学校で習って)知っていましたが
 
 『いごく穴』 という存在(?)自体は知りませんでした…(汗
 
知って初めて〝あの人〟の体験が解りました。
 
次から次へと放り込まれたモノは、人間だったのか…と…。
 
 
 
そして〝あの人〟は、もう死んでると思って放り込まれたんだけど
 
実はまだ息があったんでしょうね…。
 
 
 
私が体験させられる〝その瞬間〟は、いつもかなりの衝撃や痛み・苦しみが伴うものだったのですが
 
この 『いごく穴』 に放り込まれた〝あの人〟の中(?)に入っていた時は、それがあまりありませんでした。
 
たぶん虫の息状態だったのかなぁ…。
 
感情部分は、かなり激しいものでしたが
 
身体的にはホント…段々意識が薄れていく様な感じで、なだらかに逝きました。
 
 
 
 
こうして、知らなかった事をあっちの人に教えられました。
 
そりゃ…ね…知らなかった事を知る事で、ひとつ賢くなれましたよ…
 
でもね…体験は…させないでよぅ…(T△T)
 

sanzunokawa について

イソラ
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視えていた頃 『餓死』 への2件のフィードバック

  1. Baron より:

    なんだか最近ここに入れなかったんですが。。。
    私のPCの動きがおかしかったからそのせいかなぁ? ( ただ今ウィルススキャン中 )
     
    死の疑似体験かぁ。
    それは 死者が自分の死に様を分かって欲しい
    こんなに苦しかった、つらかった、死にたくなかった、という
    思いがあった場合でしょうか。
    疑似体験することで それが供養にもなるのかな・・・・。
     
    だけれど、そんなところにチャンネルがあってしまうなんて
    つらいなぁ。 

  2. イソラ より:

    こんにちは
    実は私もなんですよ…(;´Д`) <なんだか最近ここに入れなかった
    今月に入って、ちょこちょこ入れなくなった…_| ̄|○
     
    午前は入れたのに 午後からは入れなかったり それが3日間ぐらい続いたりと…。
    詳細スキャン(て言うのか?)すると サーバー(だったかな?)自体のエラーで
    対処法は 管理者に相談して下さい…てな事が出て来るぅぅぅ(><)
     
    いや…私自身 そんなのしたナイし…(--; <疑似体験することで それが供養にもなるのかな
    もしそうだとしても 供養するつもりで物事に向かうのであれば良しですが 
    そのつもりもなく イキナリ見も知らん人から強要されても…ねぇ…(-_-|||
     
    >そんなところにチャンネルがあってしまうなんて
    結果的には 良いのか悪いのかは解りませんが
    色んな人の 死の瞬間を体験させられたからこそ 現実での別れの場面では
    出来るだけ死に逝く人の前では 涙は見せないでおこう…と(ある程度は)我慢出来るようになりました。
    (逝く側が 残った者に対し「泣かないで」と、悲しむ気持ちの体験もよくあったので)

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